2016年7月9日、代表世話人の森博威先生の呼びかけのもと、130名以上の方にお越しいただき第2回とちノきセミナーが東京オリンピックセンターにて開催されました。セミナーに先立っての世話人会特別企画では「東北」にスポットを当て、岩手の高田病院高橋宗康先生に基調講演していただき、本ネットワークと東北の医療機関との連携の可能性について議論しました。やはり「繋がる」大切さを再認識しました。須賀川市の公立岩瀬病院の三浦純一院長は 高橋先生の学生に対するER研修の取り組みを聞き、「実践している人の言葉は重い」と一言。そんな三浦院長の率いる公立岩瀬病院の取り組みは、地域包括ケアの中に産後ケアハウスを取り入れ、街づくりの中心に持ってくること。
「自治体を取り込もう」「やらないと始まらない」という院長の言葉に、ハッパをかけられたように感じました。
セミナー本番は午後1時から始まりました。出足はゆっくりでしたが、次第に参加者も増え、会場も8割方埋まりました。前回同様、森先生によるオープニングで幕を開けました。今回のテーマは「家族で海外で働く、地域で働く」。思い返せばチャレンジングなテーマでした。
このテーマを選んだ理由は、「国際保健のキャリア」を語る中で、少なからず「結婚や出産」がネガティブに語られるケースがあると感じていたためです。
しかし、実際には家族がいるからこそ踏み出せる場合もあったり、家族との生活の中で得られる学びは国際保健の現場でも行かせることが少なくないのではないか、と考えたからです。
しかし参加者の多くは学生も含めた若手(=結婚・出産未経験)です。そこに向かって家族の話をどう伝えればいいのか、演者も戸惑ったかもしれません。
そんな中、第一演者の米田哲先生のプレゼンは、いつもながら期待に違わず圧巻でした。「家族で海外」の前に「結婚のススメ」。結婚生活には国際協力のエッセンスが詰まっている、といいます。結婚とは異文化理解であり、金銭と時間のマネジメントだ。家庭内NGOを立ち上げるのと同じで、最後は「覚悟だ」という先生のプレゼンは、ユーモアに溢れていました。引き継いだ奥様の恭子さんの話では、「結婚・出産・育児といったライフイベントと引き換えに、できなくなることもある。ハードルに思えるかもしれないけど、今の自分にできることを。それは必ず将来還元されるし、無駄はない」という言葉が印象的でした。
次いで登壇した寺川偉温先生の「ベトナムで医者として働く」と題しての講演は、現地の詳細な生活の様子や、家族で働くことで直面した様々な苦労、緊急移送の話など幅広いものでした。「結婚していても、子どもがいても海外には行ける」という力強い言葉が耳に残りました。引き継いだ奥様の瑠奈先生には、女性ならではの「買い物」「生活のしやすさ」「住居の安全面」などについて具体的なエピソードを披露していただき、海外で家族で働くことで得られたメリットとデメリットをまとめていただきました。
第2部はディスカッションでした。まず、筆者(坂本)から、医療従事者の7割は女性であること、国際保健で働くスタッフの多くは女性であることを踏まえると、家族で海外で、地域で働く際に「女性の働き方を考える」ことは男の我々がキャリアを考えるうえでも避けて通れないのではという話をさせていただきました。フロアからも意見をいただきました。「自分の時代は男性が育児に関わるのは恥ずかしいことだった」「時代が変わった」という声もある一方で、「看護師はこの問題に数十年前から直面していて、ようやく気付いてもらえたのかという思いがある」という師長さんの発言は印象的でした。
ただ、このテーマをまとめるのは非常に難しく感じました。もっとフロアの皆さんが広く議論に参加できるような工夫も必要だったかもしれません。ファシリテーションに対する厳しいご意見もいただきました。いただいたご意見は謙虚に受け止め、来年以降の企画に活かしていきたいと思います。
第3部は、今年から長野県の新生病院、福島県の県立南会津病院、公立岩瀬病院、ネパールのチョウジャリ病院も加わり、さらに賑やかになりました。参加者の皆さんに様々なつながりを提供することができたのであれば幸いです。多くの皆さんのご尽力で今回も無事に終えることができました。
心より感謝いたします。
【第2回とちノきセミナー】家族で海外で働く、地域で働く
【第1回とちノきセミナー】途上国で活動する医療従事者の生の声